9月FOMCレビュー

長谷川友哉
2021-09-29
(
Wed
)

エバーグランデのどさくさに紛れて9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されたこともあり、普段より注目度が薄れた印象がありましたが、先週21日〜22日に米連邦準備理事会(FRB)が政策金利の0.00%〜0.25%の据え置きと、現状の月1,200億ドルの資産購入プログラムの維持を決定しました。

本稿では、9月FOMCの声明、経済見通し、それからパウエルFRB議長の記者会見で気になった部分をかいつまんだ上で、次回FOMC会合までの焦点についてお話させていただきます。

FOMC声明

今回発表されたFOMC声明では、大きく三つの変更点が加えられました。

一つ目は経済回復とコロナの影響についてです。6月会合の声明で、パンデミックの影響を最も受けた業種は「依然完全に回復していない(have not fully recovered)」とされていましたが、9月会合では「ここ数ヶ月で改善した(have improved in recent months)」と継続的な経済回復の進展が示されました。ただ、そこに「新型コロナの感染ケースの増加が回復を減速させている(the rise in COVID-19 cases has slowed their recoery)」との文言が加えられており、新型コロナのデルタ株感染拡大に対する人々の行動の制限引いては経済活動の減速に懸念が示される格好となりました。

二つ目は、物価上昇率です。前回では、物価上昇について、「Inflation has risen(物価は上昇した)」と記されていましたが、今回では「Inflation is elevated」となりました。単語の意味合い的には一見変わりませんが、前回に引き続き水準が引き上がったことが示唆される形となっています。

そして、三つ目は資産購入プログラムの段階的縮小(テーパリング)についてです。前回までは「進捗を継続的に精査する(will continue to assess progress)」とされていましたが、今回では「期待通り広範な進展があれば、委員会は資産購入のペースを調整を行うことがもうじき正当化されると判断している(If progress continues broadly as expected, the Committee jedges that a moderation in the pace of asset purhcases may soon be warranted)」、とある程度踏み込んだ変更が加えられました。

以上のことから、7月の会合から、委員会にとっては物価上昇とデルタ株の影響が新たな懸念材料として浮上したことがわかり、こうした懸念は会合後に発表された経済見通しでも如実に反映されていました。

経済見通し(Summary of Economic Projection)

9月の経済見通しでは、21年末時点の国内総生産(GDP)見通しの引き下げや、失業率見通しの引き上げがされており、やはり目先の経済活動の減速が予想されています。一方で、21年以降ではGDP見通しは引き上げられ、失業率は6月の見通しから変わらずとなっており、足元のデルタ株の影響は一時的であるという見方が伺え、来年には政策金利の誘導目標を引き上げることができる状態になると予想されています。

第1図:FOMC9月経済見通し 出所:fred.stlouisfed.org、federalreserve.govより作成

前回(6月)の見通しでは、政策金利の引き上げは23年中と予想されていましたが、今回ではそれが22年に前倒しになっています。これは、足元の物価上昇を反映した形と言えますが、既にジャクソンホール会議で年内の緩和縮小が示唆されていたこともあり、今回の利上げ予想前倒しは市場にとってそれほどのサプライズではなかったと言えます。

定例記者会見

パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長もFOMC後の定例記者会見で、来年も物価上昇率が(目標の2%より)高い状況が続けば、利上げが実施できるとした他、早ければ11月のFOMC会合でテーパリングを決定する可能性を示唆しました。また、FOMC会合参加者の半数が、来年の中盤にはテーパリングを終了させるシナリオが適切だと考えていることも明かしました。

今後の焦点

11月のテーパリング開始時期決定が濃厚となったことで、米国債市場ではタントラムが起きるかのように利回りが上昇しています。そこに、同国の債務上限を巡る問題ものし掛かり、市場は荒れ模様となっています。

ただ、FRBとしても、11月の会合で本当に踏み込んだ決断ができるかわずかな不安要素も示される形だったかと見受けられます。1番の懸念としては、8月の雇用統計で非農業部門雇用者数が大幅に下振れたことで、21年末時点の失業率見通しが引き上げられています。声明やパウエル議長の記者会見からは緩和縮小の計画が練られていることは明確ではあるものの、それはあくまで経済回復が継続して確認されればの話なので、9月分の雇用統計や失業保険の新規申請件数などが引き続き焦点となります。

9月は米国における新型コロナ感染者数が減少傾向にあり、8月ほどの下振れはないかもしてませんが、依然として1日あたり10万人以上の高水準を維持しています。失業保険の新規申請件数も、9月第1週で3万件以上の減少が確認されましたが、その後2週間続けて増加傾向となっており、80万人以上の雇用者数増加は9月も見込めないかもしれません。

第2図:米雇用統計非農業部門雇用者数変化 出所:fred.stlouisfed.orgより作成
第3図:米新規失業保険申請件数 出所:fred.stlouisfed.orgより作成


著者
長谷川友哉
マーケット・アナリスト

英大学院修了後、金融機関出身者からなるベンチャーでFinTech業界と仮想通貨市場のアナリストとして従事。2019年よりビットバンク株式会社にてマーケットアナリスト。国内主要金融メディアへのコメント提供、海外メディアへの寄稿実績多数。

英大学院修了後、金融機関出身者からなるベンチャーでFinTech業界と仮想通貨市場のアナリストとして従事。2019年よりビットバンク株式会社にてマーケットアナリスト。国内主要金融メディアへのコメント提供、海外メディアへの寄稿実績多数。
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