2万ドル回復もまだレンジ内のビットコイン ゴールドとの相関を読み解く:11月のBTC相場

依然動意薄だが潮目の変化も
10月のビットコイン(BTC)は小幅高で20,000ドル(≒296万円)を回復したが、引き続き6月下旬から続く17,500ドル〜25,200ドルレンジ内での推移となっている。
イングランド銀行(BOE)の利上げ見送りと国債購入臨時決定や、オーストラリア準備銀行(RBA)の利上げ幅縮小、更には9月の米供給管理協会(ISM)製造業景購買担当者景気指数(PMI)が50.9に低下したことによる米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペース減速観測の台頭で、10月のBTC相場は20,000ドルを回復して始まった。一方、直後に発表された9月の米雇用統計で、市場予想を上回る雇用者数の増加と失業率の改善が明らかとなり、こうした希望的観測が後退し、相場は上げ幅を掻き消した。
他方、19,000ドル周辺では、オプション市場で同ストライクに建玉が積み上がっていたことからかデルタショートの利食いもあり、BTC相場は底堅さを発揮。9月の米消費者物価指数(CPI)は、8月の8.3%から8.2%への低下と今一つの結果だったが、インフレ頭打ちが想起され、再びFRBの利上げペース減速期待が台頭した。10月下旬には、8月の米ケース・シラー住宅価格指数の低下や、リッチモンド連銀製造業指数の大幅な低下を受け、相場は20,000ドルに乗せた。9月の米個人消費支出の伸びが概ね市場予想の範囲内だったことや、第三・四半期の雇用コスト指数の伸びが鈍化したことも相場の支えとなり、BTCは2カ月ぶりに月足終値で節目の20,000ドルを回復した。

先月までは、市場がFRBの利上げペース減速に対して時期尚早な期待感を持っていると指摘したが、10月を経てこうした期待感を持てる根拠が徐々に出てきたと言える。
まずは、米国の経済指標の悪化だ。9月のISM製造業PMIが、景気後退との分水嶺となる50に近づいたことに加え、その先行指標ともなる10月のNYとフィラデルフィア連銀製造業景況指数の悪化や、10月に発表された住宅関連指標が軒並み下振れとなるなど、先月は利上げの影響が垣間見え始めたと言えよう。
また、9月までFRB関係者は一貫してタカ派的な姿勢を貫いていたが、直近では利上げの効果やサプライチェーンの改善を評価する関係者や、景気への懸念を示す関係者も若干名出てきており、実際に9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、積極的な利上げによる景気への甚大な影響を軽減するため、ペースの調整(calibrate)の重要性を訴える参加者が数名いたと記されていた。地区連銀経済報告(ベージュブック)においても、景気横ばいと減速を報告する地区が半数となっていた。


また、上述のRBAに続き、カナダ中銀(BOC)も10月、景気後退を巡る懸念から利上げ幅を縮小し始めたことに加え、欧州中央銀(ECB)のラガルド総裁も金融政策引き締めの「かなりの(substantial)」段階を終えたと、政策決定会合後に発言しており、各国の金融引き締めサイクル転換機運が高まっていると言えよう。
こうしたことで今まで通り期待感が先走っていることに変わりはないが、仮に今月FRBが12月からの利上げ幅縮小の可能性を否定しても、経済指標の悪化が続けば利上げペース減速観測が湧き上がり、引き続きBTC相場の下支えとなろう。
「安全資産」との相関の強まり
バンク・オブ・アメリカのストラテジストが10月のレポートでBTCとゴールド(XAU)の180日間の相関が強まっていることを指摘したことが界隈では話題となった。米国の景気後退入りが見え隠れしマクロ環境の見通しが不透明な中、質への逃避でBTCに資金が流入するというのは綺麗な話ではあるが、実際のXAU相場の動きや市場の米政策金利見通しも鑑みれば、「安全資産」としての双方の相関が強まっている訳ではなさそうだ。
180日間のBTCとXAU、ナスダック総合(IXIC)、それから政策金利動向に敏感とされる米2年債利回り(US2yr)の相関係数を見てみると、確かに6月あたりからBTC-XAUの相関が明確に強くなっていることがわかる(第2図内黄線)。ただ、重要なのは「以前と比べて強くなっている」という点で、相関係数が0.243であることからBTC-XAUの相関は弱いという結論になる。また、単純な線形モデル(y = ax + b)のあてはまりを示す決定係数も0.059と、基準値となる0.5にほど遠く、XAUの動きでBTCの動きが説明されるとはとても言い難い。

仮に、時系列データであることから傾向の変化に注目したとしても、過去180日分のBTCとXAUの相場は、足元では底堅い一方、方向感としては下げており、逃避マネーの受け皿になっているようには見えない(第3図)。むしろ、BTC-XAUの相関係数が6月に上昇し始めるタイミングで、BTC-US2yrの相関係数が急落しており、数値を無視して傾向だけの話をすれば、BTCはFRBの政策金利見通しに反応して動いていると言えるのではないだろうか。そもそもXAUは国債利回りと実質金利と関連性があり、5年物の実質金利とXAUの180日間の相関は、6月あたりから過急ピッチで下げている点にも注目したい(この間、実質金利はほぼ全ての年限で上昇している)。

ブレイクアウトはまだか
上述の通り、BTC相場は米金利動向に敏感になっているとすると今月も引き続き底堅い展開が想定される。FRBの中で積極的な利上げに対して慎重論が出始めていることや、景気減速の兆し、さらにはインフレ頭打ちの兆しが見え始めた現状で、金融引き締めを現在FOMCが想定している以上に加速させる可能性は限られてくると言え、残る重大な議論はターミナルレートが4.75%で止まるか、5.0%まで上がるかになってくるだろう。よって、米国債利回りの上昇余地もあと一段程度と言え、早ければ来年第一・四半期中にFRBの利上げサイクルが折り返しに入る公算が高いと見ている。また、12月のFOMC会合までの経済指標で利上げの効果が確認されれば、国債利回りの上値は圧迫され、BTC相場の下支えとなろう。

勿論、12月に5度目の75ベーシスポイント(bp)の利上げが敢行される可能性は依然として排除できないが、先月からも流通するBTCの含み益割合は「売られ過ぎ」とされる50%から然程回復しておらず、潜在的な売り圧力は引き続き限定的と指摘され(第5図)、今月もレンジ下限の17,500ドル周辺は相場のサポートとなろう。「2015年のような鍋底相場」の形成はまだ続きそうだ。

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