BTC、1月の勢いはどこへ? 重要局面迎えるも失速:3月のBTC相場

続かなかった1月の上昇劇
2月のビットコイン(BTC)対ドル相場は終値ベースでほぼ横ばいとなり、月足は寄引同事線となった。先月は、市場の米政策金利見通しが、米連邦公開市場委員会(FOMC)の見通しと比較して依然として楽観的だったことや、BTCの日足相対力指数(RSI)のダイバージェンスを引き合いに、「1月の相場上昇は本物か?」と疑問を投げかけたが、BTC相場は1月FOMC通過後に一時的に24,000ドルに乗せて材料出尽くし感から失速。更には、その二日後に発表された1月の米雇用統計で、月間雇用者数が市場予想の18.5万人を大きく上回る51.7万人となり、相場は上値を重くした。
中旬に差し掛かると、米国の証券法違反の疑いがあったクラーケンのステーキングサービスを巡り、同社が米証券取引委員会(SEC)と和解した上でサービスを停止すると発表したことで、アルトコイン主導の下げにBTCも連れ安となり、22,000ドル割れをうかがう展開となった。その後も、SECがバイナンスUSDを巡り発行体であるパクソスの訴訟準備をしているとの報道や、NY金融サービス局が同社にBUSDの発行停止命令を発するなど、業界に衝撃が走るヘッドラインが続いた一方、ビットコインのブロックチェーンでNTFの作成を可能にするプロトコル、オーディナルズの影響で、小額のBTCを保有するアドレスが増加傾向になったことや、SECのゲンスラー委員長が暗号資産(仮想通貨)で唯一「コモディティ(商品)」と認めるBTCに、アルトコインからの逃避の動きがあり、相場はドミンナンスの回復を伴い22,000ドル周辺から反発し、昨年8月高値の24,000ドルに乗せた。
一方、2月後半からのBTC相場は、昨年8月高値の25,200ドルをうかがいつつ、高値揉み合いに転じた。8月高値は過去9ヶ月間の高値であり、セルシウスショック後の安値レンジの上限と、チャート上では重要な節目となることから、ブレイクアウトへの期待感で相場が支えられた側面も指摘される一方、米国の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)が市場予想を上回ったことや、こうしたインフレの高止まりを受けて、数名の米地区連銀総裁が3月FOMCでの利上げ幅拡大(25bp→50bp)を選択肢として排除しない姿勢を示したことで、相場は上値を抑えられた。
こうした中、21日のBTC相場は一時8月高値を更新するも、すかさず売りが入り反落。ブレイクアウトがダマシとなった失望感や、堅調な米経済指標が相場にのし掛かったところ、1月の米個人消費支出(PCE)が12月から上昇し、BTC相場は高値揉み合いから下放れを演じ、足元、23,000ドル台で推移している。

市場の金利見通し大幅修正:それでもまだ足りないか?
1月のFOMC以前では、市場の米政策金利予想が12月にFOMCから発表された見通しよりも楽観的であったが、1月の雇用統計を境に徐々に大勢の予想が引き上がり、ついにはターミナルレート(金利の到達点)が6月にFOMC見通しを上回るシナリオが大勢の予想となった(第2図)。一方、こうした背景には雇用統計や、CPI、PPI、PCEといったインフレ指標が強めに出たことがあり、結果を受けて数人の米地区連銀総裁が3月FOMCで利上げ幅を25bpから50bpに戻す可能性を排除しない旨を示した訳だが、市場は依然としてこの可能性を織り込みきれずにいる。
確かに、1月FOMCの議事要旨が示すように、3月の利上げ幅拡大支持派は少数であり、現状、確認できる限り、メスター・クリーブランド地区連銀総裁、ウィリアムズ・NY地区連銀総裁、ブラード・セントルイス地区連銀総裁と、カシュカリ・ミネアポリス地区連銀総裁の計4名となっている。さらに言えば、この内、今年のFOMCで投票権を有するのはウィリアムズ総裁とカシュカリ総裁の2名のみだ。
ただ、米国のディスインフレに歯止めが掛かるか懸念が燻る中、米供給管理協会(ISM)が3月1日に発表した製造業の動向調査レポートでは、2月の支払価格指数が昨年10月から続いた低下傾向から一転して51.3と上昇傾向に転じていた(50以下で低下傾向、50以上で上昇傾向を示す)。実は、同指標は1月時点で12月の39.4から44.5と低下ペースが鈍化し始めており、他のインフレ指標の減速ペース鈍化を予兆していた。
1月に続き2月の米インフレ指標が減速ペース鈍化、或いはPCEのように伸びが加速となれば、市場としては3月の利上げ幅拡大をさらに織り込みにいき、リスク選好度は再び冷え込むと指摘され、2月の雇用統計(特に賃金上昇率)やCPIには要警戒だ。

ついに動き出したSEC
2月のビッグニュースと言えば、クラーケンのステーキングサービス停止に端を発するSECの規制厳格化の動きだ。クラーケンのサービスを巡っては、「情報開示に欠ける」との指摘がSECから入り、ステーキング自体というよりは商品スキームに問題があった側面が指摘されるが、米国において特定の取引が投資契約に該当するかを判断するハウィーテスト(Howey Test)の観点からは、取引所を介したステーキングは米証券法に抵触しないとは言い切れない部分もある。
ハウィーテストには3つの判断基準がある:①現金の投資、②共同事業への投資、③第三者の努力に基づく利益への期待。そもそも、ステーキング自体は、トークンのロックアップは「担保」という側面が強く、投資行為に該当しない可能性が高い。加えて、PoSではバリデータ自らがブロック生成に参加することから、「第三者の努力に基づく利益への期待」は当てはまらない。
その一方で、取引所がユーザーに代わって公募したトークンをステーキングするとなると、まず「担保」というニュアンスが弱くなる。加えて、「共同事業」の定義とされる「ホリゾンタル・コモナリティ」と「バーティカル・コモナリティ」の構図が否定しきれなくなる上、「第三者(この場合取引所)の努力に基づいた利益への期待」が生まれてしまう可能性がある。(ホリゾンタル・コモナリティとは、投資家の資金がプールされることで生まれる投資家の横の繋がりを指し、バーティカル・コモナリティとは、その資金を利用する主体と投資家の間で生まれる縦の繋がりを指す。)
クラーケンの一報を受けて、米国でステーキングサービスを提供するコインベースのアームストロングCEOは、チェーン上で決められた報酬をユーザーに分配することに問題はないと自社サービスを擁護したが、上記の観点から鑑みれば、クラーケン以外のステーキングサービスにもSECの規制が入る可能性は排除しきれないだろう。
さらに気になるのが、BUSDを巡るパクソスに対するSECの訴訟準備だ。SECは2月3日付けで、特定の容疑で訴訟を通知するウェルズ通知(Wells notice)を送っていることがわかっているが、「BUSDが証券に該当する」とのSECの主張以外、その詳細については公式に明るみになっていない。証券法違反の容疑が、パクソスとバイナンスの関係性や、BUSD特有の発行スキームに掛けられていれば幸いだが、他のステーブルコインにも共通する内容であれば、業界や市場へのインパクトは大きい。既に、BUSDからは数十億ドルの資金が抜けており、コインベースも流動性の観点からBUSDの取引を停止した。
ステーブルコインは仮想通貨市場の流動性を支える存在であることから、SECの規制がどこまで波及するか、注意してみていきたい。
不透明感強いが、期待感に支えられる側面も?
昨年末の時点では、FRBの利上げが3月〜5月に終わる観測もあったが、状況は煮詰まるどころかより複雑になり、SECの動きもあり不透明感は一層濃くなった印象だ。ただ、BTC相場は依然として今年の高値圏を維持しており、2月は上値が重くも底堅い展開となった。
米経済のファンダメンタルズが米株市場の味方とならない中でも、BTC相場が底堅かった背景には、上述の通り、8月高値からのブレイクアウトへの期待感が一因として挙げられる。2023年前半は比較的保守的な展開を想定していたが、こうした市場の期待感はある意味正当化されると見ている。
というのも、BTC対ドルの8月高値は、昨年6月に起きたセルシウスショック以降の安値圏レンジ上限に当たる水準であり、9ヶ月に及ぶ安値圏からの脱出がかかる重要なチャートポイントと言える(第3図)。また、この安値圏からのブレイクアウトに成功すれば、ビットコインの半減期サイクルの観点からは長期上昇トレンドが始まるサインとなる可能性が指摘され、市場の期待感が強まってもおかしくはない(第4図)。
テクニカルの観点からも、揉み合いが長く続けば続くほどブレイクアウト後の値動きは大きくなるとも言われる。


ただ、やはりファンダメンタルズが味方しない中で起爆剤となる材料が不足し、2月のBTC相場が8月高値上抜けに失敗したことも忘れてはいけない。想定されるレンジの上限には昨年末時点から修正を加えるが(第5図)、3月のメインシナリオとしては、若干、弱含みつつ、引き続き高値揉み合いが続く展開を想定している。

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