6月FOMC要点とビットコイン価格への影響

長谷川友哉
2021-06-17
(
Thu
)

6月FOMC要点

FOMC声明と経済見通し

6月15日から16日にかけて米国で開催された連邦公開市場委員会(FOMC)で、米連邦準備理事会(FRB)は現行の低金利政策(0.00%〜0.25%)と月間最低1,200億ドルの債券購入を据え置くことを決定した。ただ一方で、今回のFOMC声明からは、「(コロナウイルスによる)パンデミックが甚大な人的及び経済的苦難を米国と世界で生んでいる」という文言や、「継続する健康的危機が経済の重石になり続けている」という文言が取り除かれ、ワクチン接種の進行が経済活動再開に寄与していることを示した。

こうした経済に対する強気な見方は今回発表されたFOMC参加者の経済見通し(Summary of Economic Projections)の中でも示され、各参加者が向こう数年の政策金利の予想を示すドットプロットは特にタカ派的なサプライズとなった。前回3月時点では、23年末の利上げ予想者は18人中7人だったの対し、今回は13人が利上げを予想し、中央値は0.125%から0.625%と2段回の利上げが予想された(0.25%ずつ引き上がる)。また、22年末の利上げ予想者も4人から7人と増加した(第1図)。

もう一つある意味でサプライズだったのが、FRBがインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)の予想引き上げだ。FRBメンバーはこれまで「物価上昇は一時的」というスタンスを繰り返し強調していたことから、PCEの予想は据え置きか引き下げを予想していたが、食品とエネルギーを除くコアPCEは、21年末時点で3.0%(前回は2.2%)、22年末時点で2.1%(前回は2.0%)と、特に今年分の予想が大きく引き上げられた(第2図)。これはFRBの政策舵取りに対する自信の現れなのかとも思えるが、パウエル議長は高い物価上昇率が続く潜在的リスクにも言及しており、やや矛盾がある印象だ。

ドットプロット
第1図:ドットプロット(左:2021年3月、右:2021年6月、赤点が中央値) 出所:federalreserve.govより作成
経済経済見通し比較
第2図:FOMC参加者による政策金利、GDP、コアPCE、失業率予想中央値(21年3月対21年6月比) 出所:fred.stlouisfed.orgより作成

テーパリングについて

量的緩和の段階的縮小(テーパリング)について、市場では8月に開催されるカンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール)が節目になるとの声が多く聞かれる中、4月の会合に続き今回のFOMCでもFRBの掲げる目標(最大雇用と物価安定)の進捗について議論され、「今後の会合でも引き続き議論していく」とパウエル議長本人から記者会見の場で発表があった。

目標への現状の進捗や、テーパリング開始に向けた条件のヒントに関しては依然として具体性を大きく欠く内容ではあったが、FRBが将来的なテーパリングを念頭に入れて準備をしているとの意思表示は明確さが増してきた印象だ。

一方で、実際に米国の物価と雇用が前回3月に発表された経済見通しからどれほど変化があったかといえば、物価は市場の予想を上回る上昇基調を保ち一定期間での平均2%の目標に向けて進んでいるように見えるが、失業率は5月時点で5.8%となっており、目標からは依然として遠い。

失業率が下がり難くなっている一因とされる「2021年米国救済計画法(ARP)」は9月に完全に失効するのだが、その月の雇用統計が発表されるのは10月になる。言い換えれば、労働市場の供給サイドの問題が是正されデータが出てくのはジャクソンホールの2ヶ月後ともいえ、労働市場の改善を具体的に示すデータが手元にない状況でFRBがテーパリングについて8月にどこまで踏み込むのかが注目される。

余談とはなるが、2013年5月にテーパリングについて言及し「バーナンキ・ショック」を巻き起こした当時のFRB議長のベン・バーナンキ氏は、テーパリングについて余計な言動を控えるためかこの年のジャクソンホールを欠席したという事実もある。これはバーナンキ議長の発言で市場が大きく混乱したことに対する配慮だったとも言えるため、例外的な措置だった。一方のパウエル現FRB議長は市場を混乱に陥れることなく巧みにコミュニケーションをとってきているように思え、7月のFOMCでもテーパリングについて議論を進め、8月のジャクソンホールに臨むだろう。

ビットコイン価格への影響

今回のFOMCは全体的にタカ派色が強まった印象ではあったものの、PCE予想の引き上げを除いてはほとんどの点において想定の範囲内であった。16日はインドでの暗号資産(仮想通貨)禁止または規制についての報道や、中国で強化されるマイニング締め出しの影響でハッシュレートが軟化したこともあって、欧州勢参入後からビットコインの相場は上値を重くし、米国市場が始まる前には既に一段安となっていた。FOMCの結果が出た後はというと、乱高下しつつも声明に政策変更を記す文言が追加されなかったことやインフレの見通しが引き上がったことと、利上げ時期の前倒しと記者会見でのテーパリングについての発言が影響を相殺しあったか結果的に横ばいの推移となっており、タカ派な結果は概ね織り込み済みであり、無難にイベントを通過した印象だ。

ただ、安心感から買いを誘うといったような結果でもなかったことには注意したい。インフレ高進リスクも指摘されたが、米長期金利の上昇が続けばドル高株安となりやすく、ビットコインにとっても芳しい状況ではない。また、別稿でも指摘の通り、ビットコインはハッシュレートの安定した推移が相場復調のシグナルとなるため、足元のハッシュレート低下もリスク要因として依然として注意を要するだろう。

ビットコインチャート
第3図:BTC対円チャート 1時間足 出所:bitbank.ccより作成


著者
長谷川友哉
マーケット・アナリスト

英大学院修了後、金融機関出身者からなるベンチャーでFinTech業界と仮想通貨市場のアナリストとして従事。2019年よりビットバンク株式会社にてマーケットアナリスト。国内主要金融メディアへのコメント提供、海外メディアへの寄稿実績多数。

英大学院修了後、金融機関出身者からなるベンチャーでFinTech業界と仮想通貨市場のアナリストとして従事。2019年よりビットバンク株式会社にてマーケットアナリスト。国内主要金融メディアへのコメント提供、海外メディアへの寄稿実績多数。
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