7月FOMC要点とビットコイン価格への影響

長谷川友哉
2021-07-29
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Thu
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7月27日から28日にかけて、米連邦準備理事会(FRB)が連邦公開市場委員会(FOMC)の会合を開き、金融政策の据え置きを決定した。

6月会合では、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて始まった月1,200億ドルの債券購入(量的緩和:QE)の段階的縮小(テーパリング)開始時期について議論されたこと、加えて会合参加者が予想する2023年末時点の政策金利(FFR)が3月の予想から引き上がったことが市場にとってはサプライズとなり、米国における金融政策正常化の前倒し懸念が一段と強くなっていた。一方、7月の会合では、タカ派的なトーンが幾分抑えられたと言える。

FRBのパウエル議長は会合後の定例記者会見で、雇用と物価の目標に向けた進展が見られるものの、目標達成までは依然として距離があるというスタンスを示した。また、テーパリングについてはより掘り下げた議論がされたが、開始時期については決定しておらず、「今後数回の会合において継続して(経済の)進展度合いを精査する」とした。

市場では、8月下旬に開催される年次経済シンポジウム(ジャクソンホール)にてテーパリング開始時期について発表があるとも予想されているが、今回の会合においてその可能性は低くなった上、FRBがテーパリングを急いでない可能性が示された格好だ。加えて、住宅市場の価格上昇を受けて住宅ローン担保証券(MBS)の購入ペース早期縮小の声も6月会合では上がったが、パウエル議長はこれについて「支持はほぼなかった」と明かした。

今回の会合では新たな発表と言えるほどの発表はほぼ無かったに等しい。ただ、6月にテーパリング議論が本格的に始まったことで、開始のタイミングについて市場が神経質になっていただけに、比較的にハト派な姿勢に映ったのではないだろうか。会合後の記者会見を受けて、ドル指数は反落、金(ゴールド)は上昇、米株も直後は上昇したが、その後の決算発表に絡む売りが出て主要指数は上げ幅を削った。ビットコインはパウエル議長の記者会見前に警戒感からか売り込まれたが、会見後は切り返し下げ幅を完全に奪回した。

テーパリング開始が決定されるタイミングは、大規模な緩和策によって生まれる流動性相場が幕を下ろすことを示唆するだけに重要な材料である。ビットコインは歴史の浅いアセットではあるが、2007〜2008年の世界金融危機を受けて初めて米国で導入されたQEのテーパリング開始時期が決まった2013年12月のFOMC会合とほぼ同時期に長期上昇トレンドが天井を打っていた(第1図内「1」)。

2020年のビットコインもこの流動性相場によって下支えられていただけに、テーパリング開始時期には神経質にならざるを得ない。

ただ、過去のパターンを見返すと、テーパリングが始まり金融の引き締めが進むにつれてビットコインの価格が下落し続けているわけでもない。周知の通り2016年から2017年にかけてビットコインは長期的な上昇トレンドを形成しているが、この間、政策金利は上昇し続けている(第1図内「2」)。また、FRBのバランスシート縮小局面でも、2019年には米中貿易摩擦を追い風にビットコイン価格は上昇していた(第1図内「3」)。

よって、テーパリングが始まることで資金の流れに変化が起きることは現実的な懸念としてあるが、流動性相場が終わるからと言ってビットコインの価格上昇が終わると結論づけるのも極端過ぎる。少なくとも、テーパリング開始時期が決まるまでは金融政策は緩和に傾いている。加えて、米国の債務拡大やインフレ高進懸念、また米国におけるビットコイン上場投資信託(ETF)承認期待など、相場を支え得る環境は健在だ。

ビットコインチャート
第1図:BTC対円、FRB資産総額、米政策金利チャート 出所:bitbank.ccより作成

では、FRBがテーパリングを開始する判断をいつ頃するのか。6月のFOMC会合のレビューにて、FRBが8月のジャクソンホールでテーパリングについてどこまで踏み込むかが注目点と指摘したが、上述の通りパウエル議長は今後数回の会合にわたって状況を精査するとしている。今後のFOMC会合は9月、11月、12月にあるが、まず9月は除外できるか。これも予て指摘の通り、9月いっぱいまでは失業保険の上乗せとなっている「2021年米国救済計画法(ARP)」が完全に失効しないため、労働力が戻り難い状況が続くことが想定されるためだ。

仮に9月から失業率の改善があったとしても、その結果が出るのは10月となる。また、ARPが完全に失効した10月のデータが出るのは更に一月先の11月となる。よって、11月まで順当に労働市場の改善があったと仮定しても、FRBが自信を持ってテーパリング開始時期の判断を下せるのは早くても今年の12月のFOMC会合ではないかと思われる。

著者
長谷川友哉
マーケット・アナリスト

英大学院修了後、金融機関出身者からなるベンチャーでFinTech業界と仮想通貨市場のアナリストとして従事。2019年よりビットバンク株式会社にてマーケットアナリスト。国内主要金融メディアへのコメント提供、海外メディアへの寄稿実績多数。

英大学院修了後、金融機関出身者からなるベンチャーでFinTech業界と仮想通貨市場のアナリストとして従事。2019年よりビットバンク株式会社にてマーケットアナリスト。国内主要金融メディアへのコメント提供、海外メディアへの寄稿実績多数。
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