IoTの未来、IBMが提唱するDevice Democracyとは何か

今回は、2014年9月にIBMから提案されたDevice Democracyについての説明と考察を述べたいと思います。
前回:IoT<Internet of Things>と仮想通貨技術が創る未来
環境センサに仮想通貨を組み込むことで、ドメインの異なるプレイヤーの負担と収入を再構築することを考えていた時、IBMから似たようなコンセプトで、もっと一般化されたDevice Democracyという発表が行われました。
Device democracy Saving the future of the Internet of Thingshttp://public.dhe.ibm.com/common/ssi/ecm/gb/en/gbe03620usen/GBE03620USEN.PDF
Device Democracyでは、IoTが現在抱える大きな問題として以下を挙げています。
- 接続のコスト大きなB2Bビジネスの場合は長期のサポート契約を結ぶのが普通である。スマートフォンやPCではそのような常識は無いが、ライフサイクルが短いため問題にはならない。IoTでは数年間のサポートをする十分なマージンが無いことが多い
- インターネットに対する信用現在のソリューションは、データを集めて解析し、デバイスをコントロールする権利をどこかが握っていることがほとんどである。クローズドソースによるセキュリティはオープンソースによる”透過性の高いセキュリティ”に変わるべきである
- 長期間使用されるIoTはスマートフォンやPCと異なり長期間使用される。車は10年、家は39年、鉄道や航空システムは50年以上使用される。長期間のソフトウェアアップデートはバランスシートに大きな影響を与える
- 価値ある機能の欠如ただ単にデバイスを繋いだだけでは価値は生まれない。より良い体験を生み出すことは非常に難しい
- 壊れたビジネスモデルデータの宣伝や売買の限界費用はゼロなので、市場原理によると価格はゼロに近づく。実際に売り上げをあげれるチャンスがあるのは、データを大量に持っていて統合する者に限られる。アプリケーションの売り上げは楽観的すぎるものが多く、スマートデバイスの製造者はIoTのエコシステムでマネタイズの方法を見つけられていない。
これらの問題を、ブロックチェーンを用いて解決します。

トランザクションコストが非常に安いブロックチェーンを利用することによって、P2PによるTrustlessなIoTが実現します。デバイスはそれ自身が一つのビジネスファンクションを持つようになり、沢山のデバイスを組み合わせて新しいビジネスを構成することができます。デバイスが、自立した一つの要素になるということです。現在のようにクラウドが支配してサービスを構成するのではなく、デバイスと同様にクラウドも一要素となり、セキュアに通信できるデバイスネットワークのマーケットが出来上がります。
ブロックチェーンについての知識を持たれている方なら、以上のようなDevice Democracyに書かれていることの意味は即座に理解できると思いますが、ここではより分かりやすく説明するため、工場の例を考えてみましょう。

工場内には大量のセンサがあり、そのデータを利用してアクチュエータを動作させたり、センサデータの統計をとったりと様々なサービスが動作しています。それらのサービスは、クラウド(サーバ)が関係するデバイスをコントロールすることで構成されており、同じ工場内の別の会社が新しいサービスを追加しようと考えた時、既存のデバイスを使用することは不可能です。つまり、ゼロから全てを作り追加していくことになるので、非常に大きな予算を必要とします。この場合は見積もり自体も難しく、ビジネスを成功させることはかなり難しいチャレンジとなります。
Device Democracyが示すように、ブロックチェーンを使用して各デバイスが使用料を持つ自立したものであった場合は、既存のデバイスを自由に組み合わせてサービスを作ることが可能になります。必要なデバイスのみ追加すれば良く、また見積もりもしやすくなります。様々な小さな新しいサービスにトライすることも可能になり、イノベーションのハードルが下がることが予想できます。
この例では、会社間のグルーロジックにブロックチェーンを用いることにより、セキュアかつフェアな新しいビジネスモデルを作ることが可能となっています。
現在、IoTの時代に向けて各社が次のGoogle、Amazonとなるべく市場を支配するプラットフォーマーを目指し、センサーデータのexchangeやデバイス連携のプラットフォーム開発にチャレンジしています。しかし例えば、先程の工場の例でそのようなグルーロジックをどこかの会社が提供したとして、抵抗なく利用したいと思うでしょうか? みすみす市場を支配させることはできないので、各社が牽制しあってうまくいかないことは往々にして起こります。
このようなグルーロジックにこそ、Decentralizedなブロックチェーンの出番となります。センサーデータのexchangeやデバイス連携等のエンジン部分は仮想通貨というよりも、Dapps(decentralized application)として提供され始めるでしょう。通貨が情報データになったのなら、情報データそのものが通貨です。Decentralizedであるからこその市場が存在するのです。運用主体が無いため市場支配者からの知財の攻撃も受けません。オープンソースで必要最低限のフィーをとるプログラムがDecentralizedに運用されます。フィーが高すぎる場合は誰かがフォークします。51%以上の支持を受けるかが重要なだけです。
前回、今回と二回にわたってIoT x 仮想通貨についての話を書かせてもらいました。非常に小さな金額(0.00…1円)でのトランザクションも可能な仮想通貨はIoTに適しています(Micropayment channelを利用し、使用料をまとめてtransaction発行することも可能です)。実社会においても、会社対会社、国対国、会社対個人、など、家族間のような非常に親しい関係以外はお金でインタラクションが行われています。自動執行が前提のIoTにDecentralizedな仮想通貨を持ち込むことによって可能になる市場は、これから沢山見つけられていくでしょう。
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