中国の旧正月がビットコイン相場に与える影響

長谷川友哉
2020-01-21
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Tue
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今年の中国の春節(旧正月)の連休が近づき、伝統的金融マーケットのみならず暗号資産(仮想通貨)市場でもその影響が話題になっている。春節では通常、前日(グレゴリオ暦でいう大晦日)から7日間連休となり、多くの人が旅行に出たり贈り物を買ったりと、出費が増加する時期でもあり、連休中に金融機関も閉鎖することから事前に現金を引き出す動きが活発となる。こうしたレトリックが要因となっているからか、「旧正月前は中国勢がビットコインを売って現金化する」という一種のシーズナリティが一部で警戒されている。

そこで本稿では、2012年から2019年の旧正月連休の①一週間前、②連休中、③連休一週間後のビットコインの値動きを確認し、旧正月に伴うシーズナリティが実在するか検証する。

2012年から2020年の春節と連休日程

2012年:1月23日(連休:1月22日〜1月29日)
2013年:2月10日(連休:2月9日〜2月15日)
2014年:1月31日(連休:1月31日〜2月6日)
2015年:2月19日(連休:2月18日〜2月24日)
2016年:2月8日(連休:2月7日〜2月14日)
2017年:1月28日(連休:1月27日〜2月2日)
2018年:2月16日(連休:2月15日〜2月21日)
2019年:2月5日(連休:2月4日〜2月10日)
2020年:1月25日(連休:1月24日〜1月30日)
*連休前後の土日休みを含む

まずは春節連休の一週間前のBTC対円の騰落率だが、通算で5勝3敗となっており、むしろ値上がりした回数の方が多くなっている(第1表)。値下がりした2014年、2016年、2019年でも、2.11%〜3.59%の下落率となっており、然程大きな影響は確認されない。中国国内で暗号資産(仮想通貨)の取引が合法であった2017以前(違法となったのは2017年9月のため、この年の春節の時期は合法であった)でも有意なパターンは見受けられず、特定のシーズナリティがあるとは結論付け難い。

第1表:BTC対円の春節連休1週間前(上段)、連休中(中段)、連休1週間後(下段)の騰落率 (最右列は各期間の幾何平均) 出所:bitbank.ccより作成


「5勝3敗」のパフォーマンスは各年の連休中と連休後一週間の騰落率でも同様であり、春節連休の前後と期間中で値動きのパターンはランダムと言えよう。2012年の連休中では相場が19%下落しており、「市場が閉まらない仮想通貨市場で現金化が加速した」と憶測を立てることはできるが、こうした大きな相場の下落は2012年以降では確認されない上、連休中に中国の取引所から現金を引き出せたかも定かではない。2014年では連休中とその前後で相場が継続的に下落したが、この時は2013年末に相場が暴騰した反動で既に下落局面に入っており、相場がトレンドに沿って推移しただけとも言える(第1図)。

第1図:BTC対円チャート (帯色が薄い順に連休1週間前、連休中、連休後1週間) 出所:bitbank.ccより作成


結果として、今回の2012年からの春節連休1週間前のビットコインの値動きからは、価格が下がりやすいというシーズナリティは確認されず、連休中と連休後1週間においても同様の結果がみられた。むしろ、ランダムな結果かもしれないが、各3期間ごとに毎年のリターンを平均すると、それぞれ+ 7%以上という結果だった(第1表最右列)。

外国為替や債券市場ではこの時期特に注目される春節だが、ビットコインに関してはそれほど警戒する材料ではなさそうだ。そもそも、昨年末から中国国内での仮想通貨取引が厳格に取り締まられるようになり、P2Pでの出来高も振るわない中、中国勢が現物相場に与えられる影響力がどれだけあるのかも疑問だ。

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