参議院議員、藤巻健史氏が語る「仮想通貨を取り巻く問題点とその将来性」[インタビュー 3/3]

真田雅幸
2018-11-07
(
Wed
)

今回のインタビューの最後に藤巻健史氏には、日銀が行っている金融政策について聞いた。今後起こり得る日銀の破綻やハイパーインフレの可能性について伺った。仮想通貨がなぜ今注目を浴びているのかを理解するヒントになるだろう。

増える政府債務と日銀が行う異次元の金融緩和

――日銀の金融政策関連のお話をお聞かせいただきたいのですが。やっぱり若い世代で仮想通貨に興味を持ってる人ってトークンの発行やブロックチェーンに興味がある層だと思うんです。でも基本的な金融システムであったり、通貨制度がどうなってるかっていうのを理解してない人が多いと思うんですよ。僕も実際に勉強してすごい難しいなと感じていまして。

以前から藤巻議員がおっしゃっている、何故日本がハイパーインフレになるのか、何故日銀の異次元の金融緩和が円に対して悪い影響を及ぼすのかという点について教えていただけますか。

藤巻:日銀の異次元の金融緩和っていうのは、皆さん普通だと思ってるけど、私みたいに三十数年も金融機関にいた人間からすると別世界なのね。僕が金融機関にいた時は、異次元の金融的緩和は非伝統的金融政策って言われてて、今までやったことのない政策なの。

それは何故やったことがないかっていうと、弊害が大きいことを皆わかっていたからなんですよ。実際、ドイツにはライヒスバンクっていう中央銀行があったんだけど、戦後異次元緩和をやったせいで潰れて、ブンデスバンクができたんだよ。ライヒスマルクというその当時の通貨が紙っぺらになって、ユーロができるまではドイツマルクが流通するようになったんです。

第一次大戦時に量的緩和を行ってハイパーインフレになったのにそれに懲りず第二次大戦でもヒトラーの圧力に負けて、ふたたび軍備拡張のために紙幣を大量に刷った。紙幣を刷るのは今と同じなんだけど、紙幣の刷り過ぎで、紙幣の価値がなくなったわけ。

今の日本には戦争はないんだけど、社会保障費とか、色んな問題に対処するために紙幣を刷り過ぎちゃったのね。紙幣を刷ること自体が異次元の緩和なので、まさにライヒスバンクが潰れた時と同じ道を歩んでるというのが今の日銀の姿なんです。

もっと根本的な話をすると、さっきも話しましたけど、日本の名目GDPは30年間で約1.5倍しか伸びてない。世界の劣等生なんだ。アメリカは4.1倍、イギリスは4.9倍で、韓国中国は75倍になったかな。1.5倍ってのはもう超劣等生なの。

名目GDPっていうのは経済規模ですから、経済規模が1.5倍になったっていうことは、人口に照らし合わせて、1人辺り1.5倍しか豊かになってないってことです。名目GDPが1.5倍になってるということは、普通は税収も1.5倍になってるわけです。何故かって言うと、国力が1.5倍になった時に税収が2倍になったらおかしいですよね。

それは経済成長の果実を税金でより多く持って行ったことになる。だから名目GDPが1.5倍になった時に国民は1.5倍豊かになり、税収は1.5倍に増える。国も同じように豊かになるというのが普通の姿。

実際、30年間で名目GDPはたった1.5倍しか伸びておらず、税収も1.5倍にしかなってないわけ。ところが30年間で歳出は2倍になってるんだ。歳入が1.5倍で歳出が2倍になってから当然1089兆円の借金が溜まるのは当たり前だよねって話で。

これは大変な赤字なんだけど、これを解消しようとして10兆円ずつ返しても108年かかるんだから。今64兆円しか収入ないのに100兆円使ってるんだから、10兆円返すために本来54兆円に歳出を抑えなきゃいけない。でも2倍の100兆円使ってるわけだから、10兆円を毎年返すって大変な赤字なんだ。その大変なことを108年やってやっと返せるわけ。今金利が低いから支出はそんなに多くないけど、金利が上がったら支払い金利も急増です。108年じゃとてもじゃないが返せないことになる。

債務を返済するためにハイパーインフレによる大増税

藤巻:そのくらいの大きい借金をどうしたらいいかっていうと、普通は返せないんです。10兆円ずつ108年かけて借りた額を返すわけにはいかないから、そうすると大増税しかないわけです。実は考えられる大増税、どの税金の税率を上げるか考えるともうないんだよね。

唯一残ってるのが大インフレ税。悪い言葉で言えば、税金って言うのは、国民から国がお金を持っていっちゃうことでしょ。インフレっていうのは債権者から債務者、お金を貸してる人からお金を借りてる人への富の移行がインフレなんですよ。

どういうことかって言うと、例えば個人タクシーの運転手さんが1000万円借りたとして、今は借金を返すのが大変かもしれないけど、すっごいインフレが来てタクシーの運賃が100万円になったとする。

2キロの運賃が100万円になったら1000万円も1日で返せますよね。だからお金を借りてる人はものすごく楽になるのがインフレ。債権者、お金を貸してる方は高インフレが来れば、100万円のタクシーに10回乗るとお金はすぐに使い切ってしまう。今の日本で債権者ってのは国民で、最大の債務者っていうのは日本国ね。

インフレっていうのは、債権者から債務者への富の移行が起こること。すなわち国民から国への富の移行ということで、まさに税金と同じ。この国が持つ大増税の方法は大インフレにするしかないんだ。

じゃあ、どうしたらいいの?っていうと、まさに異次元緩和というのは、過去にハイパーインフレを起こしたまさにそのままの手段なんです。知ってか知らずか知らないけど、ハイパーインフレっていう大増税しかないねということで、すでに足を随分突っ込んでるのが今の日本の姿だと僕は思ってる。

異次元の金融緩和の問題点

藤巻:異次元の金融的緩和で言うと、日本銀行はみずほ銀行とか、三井住友銀行から国債を買ってるんだよね。国債を買うとその買ったお金が現金でみずほ銀行に渡るわけじゃなくて、みずほ銀行が日銀に持ってる口座に振り込まれるんです。

皆さんがみずほ銀行に預金をするがごとく、みずほ銀行は日本銀行に預金をしてる。お金の残高をぽっと増やしてあげるということは、日銀の資産サイドと負債サイドの両方がメタボになるのと同じこと。日銀は世界最大のメタボなんです。他の国の中央銀行の数倍メタボ。

日本銀行はGDPに比べてめっちゃくちゃにお金をばらまいてるんだ。ばらまき過ぎをやってても、いざという時に金利を上げるとか、短期金利を上げるとか、ばらまいてるお金を回収できるということができれば、僕は全然心配しない。だけど異次元緩和っていうのはそういう手段を全部失っちゃった金融政策なわけです。

ブレーキがないためにハイパーインフレになっちゃうんだ。今景気を良くするためにデフレ対策としてアクセルを踏み込んでいるんだけども、ブレーキをなくしたのが異次元緩和。

異次元緩和をすれば景気が良くなるのは当たり前。子供でもできる政策。だけど、将来が怖くて今までの中央銀行総裁や他の中央銀行はやらなかったんです。将来のことを考えないで、今やってるのが異次元緩和。だから私はやばいよって話をしてるわけです。

それで今色んな弊害ができたわけ。異次元緩和っていうのは、長期国債価格が上がるんだ。国債の価格と金利はコインの表と裏の関係です。価格が上がるということ。長期金利がぐーっと下がってきたということ。短期と長期の金利差がなくなってるわけなんです。

銀行の収益の根源っていうのは長期の金利と短期の金利の差なんだ。それをなくしちゃったから銀行は儲かるわけがないんです。だからそろそろ異次元緩和の限界が近付いてる。けど辞めようと思っても辞める手段がないんです、ブレーキがないから。中央銀行の異次元緩和のせいで色んな問題が出てきていて、かなり危機感は強まってきてるね。

財政面では国の借金がGDP比で240%くらいあり世界最悪なわけです。破綻するのは嫌だから、日銀が足りない分お金を刷っている。お陰で日本銀行のバランスシートは世界最大のメタボになっちゃった。不健康体になっちゃった。財政が最悪で、中央銀行がまさに不健康体になってるんで、これはそろそろやばいぞということなんです。

日銀破綻の可能性

藤巻:昭和2年と21年には預金封鎖と新券発行を日本でもやってるわけです。僕は現在の日本銀行を潰し、新しい中央銀行を作るんじゃないかなと思ってる。中央銀行って社会にとっての大インフラだからなくなるわけにはいかないんだよね。新しい中央銀行を作る時代が来ると僕は思ってる。

その時ドルを持っていると大丈夫なんだけど、円では駄目ですよ。だって日本銀行の負債が円なんだから。円とは日本銀行の債務(負債)なんです。金本位制のときは円を持っていくと金に換えてくれた。潰れちゃうってことは負債の価値がゼロになるんです。何になるかわからないけど、安倍新1万円札みたいなのが通用するようになるから、現行の日本円は危ないよって、そういうことなんです。

昭和21年って戦後ですが、明治憲法下だから、私有財産権がなかった。だからかなり強引なことが出来たけどそれをもう1回預金封鎖できるかなってのは疑問に思ってます。現憲法下では私有財産権が確立しているからね。しかし、日本銀行が潰れちゃって価値がなくなるとこれは私有財産権の侵害とはいわないからね。そう考えると円は約束手形のようなもの。すなわち負債だということが分かりやすいかと思います。

例えば以前リーマンブラザーズが潰れるとリーマンブラザーズへの債券(リーマンブラザーズ負債)はなくなるけど、私有財産権に抵触しているとは言わないからね。潰れちゃったらなにもないんだから。

預金封鎖はさすがに私有財産権の逸脱だから憲法上できない。そうすると一番政府が非難されずにできるのは、新しい中央銀行作っちゃうことかなと僕は思ってる。それが今回11月8日に出した本の『日銀破綻』(幻冬舎)の内容なんだけど。

日本銀行が潰れた時に円を持っても駄目だからじゃあ、どうするのって話になった時に、やっぱり仮想通貨とドルなんですよね。円預金は駄目なんだけど、ドルは日銀の負債じゃないから大丈夫。それしか危機を回避する方法ないんじゃないかなと思ってるんです。

通貨制度自体に問題はないのか?

――仮想通貨について勉強してると通貨がどういうものかっていうのを結構考えるようになるんですよね。そこで今の通貨制度自体にすごく疑問が湧いてくるんですよ。債務通貨のフィアットって、債務によって発行されるわけじゃないですか。債務っていうのは金利が発生し、返済額がかならず増えていくため、新しい中央銀行ができたところで結局、債務が増えすぎて同じような問題が起きると思うのですが。政府が債務としてでなく、単純に通貨を発行してインフレに考慮して供給量を調整するような、通貨の制度自体を変更する可能性はないのでしょうか?

藤巻:政府が通貨を発行する税っていうのは10年くらいして、いつもポシャるんだよね。政府が発行するってのはまずくて、やっぱり僕は中央銀行が必要だと思っている。中央銀行が通貨を発行するべきなんだ。何故かっていうと、インフレにペッグにするって言いながら、過去の例からして、政府のような機関が発行しちゃうと、税金集めるのが大変だから足りないお金は通貨発行でしのぐようになる。だからこそ、そういう自由気ままに政府が紙幣を刷って、財政赤字になってハイパーインフレになるのを防ぐために、全世界で中央銀行は政府から分離してるわけ。独立させてるわけね。ただ、今の日銀が実質独立してるとは思えないし、ある人は政府の印刷所になりさがっているといっているけど言い得て妙だよね。

政府と中央銀行の分離って、政府が思いのままに紙幣を刷って、ハイパーインフレにならないように気を付けようっていうのが根本の精神なんです。それを崩壊させるのはまずい。

だから中央銀行が必要だと思うんだけど、昔の中央銀行は、さっき言ったように資産をどんどん膨らませるということは全然やってなかった。中央銀行というのは経済規模の増大に合わせて、その分だけ通貨を増やす作業を行うんだ。経済が成長すると通貨不足になり通貨の価値が上がってデフレになっちゃいますから、経済成長に見合った通貨の供給は必要なんだけど。

経済の成長とともに通貨が増えるのは当たり前で、それをやっていたのが伝統的な金融政策なの。経済成長と関係なくお金をばらまき始めたのが異次元の量的緩和で、これは僕はまずいと思ってる。

国内取引では日銀デジタル、国際取引には仮想通貨

藤巻:僕はすべての取引に仮想通貨が使われるようになるとは思っていないんだ。日銀の紙幣はなくなると思うけど、キャッシュレスの日銀デジタルという通貨は残ると思ってる。やっぱり金融政策と通貨の発行権を国が放棄するのは難しいかなと僕は思ってる。だけど、国際ビジネスっていうのは、これは仮想通貨じゃないと。例えばケニアの人に日銀デジタルって言っても通じないよね。国際ビジネスには仮想通貨の方が有用じゃないかな。

今みたいに法定通貨を国際送金に使うと手続きとかめんどくさいよね。仮想通貨が使われるようになるとグローバル化がさらに大胆に進むと思う。国際間決済、これがグローバル社会で非常に重要になるけど、国際間決済は仮想通貨で、国内での取引は日銀デジタルが使われるようになる。現金は廃止される。これが僕の将来考えている世界なわけなんだ。正直そこまで考えてる人は全然いないけどね。

――そうですね。アフリカにある発展途上の国とかって、結局何で発展しないかというと、金融インフラがないせいなんですよね。

藤巻:そうだよね。

――銀行が何故ないかというと、営業コストが割高なんですよね。収益が上がらないので。仮想通貨だとインターネットさえあれば取引できちゃうので、確かに国際間決済の可能性っていうのはすごいあると思います。

藤巻:フィリピンなんかは銀行がない地域とかあって、そういうところとは取引できないもんな。だから仮想通貨の社会的貢献度っていうのは非常に大きいと思ってる。あと寄付とか。ケニアに寄付するとか。でも法定通貨だと、交換手数料や送金手数料が取られるからやらないよね。スマホで仮想通貨を送れるならやってみようかなって人は増えるんじゃないかなと僕は思ってます。

――僕もそう思います。今世界の取引にはドルが使われていますけど、世界共通のニュートラルな仮想通貨っていうのが必要とされていると感じてます。

ーー今回は取材を受けていただきありがとうございました。

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著者
真田雅幸
マーケット・アナリスト

米国の大学で経済学を専攻しお金の流れについて興味を持つ。在学中にビットコインに興味を持ち、bitbankのメディアで寄稿を行う。2015年頃からビットコインのトレードを始め、デリバティブ情報も分析しながらトレードを行う。

米国の大学で経済学を専攻しお金の流れについて興味を持つ。在学中にビットコインに興味を持ち、bitbankのメディアで寄稿を行う。2015年頃からビットコインのトレードを始め、デリバティブ情報も分析しながらトレードを行う。
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