統計で振り返る2019年のビットコイン

長谷川友哉
2020-01-10
(
Fri
)

2019年ビットコインの大まかな流れ

高値を切り下げ続けた2018年の弱気相場を受け、「クリプトの冬」とも囁かれる中で始まった2019年のBTCの対円相場でしたが、2019年上半期は、LTC(ライトコイン)やBNB(バイナンスコイン)相場の上昇に起因する「アルトコインシーズン」の到来や、テザー社のBTC相場買い支えの思惑や株・元安の恩恵を受け、相場は2017年来の安値圏となる36万円周辺から150万円周辺まで上昇した一方、第3四半期からは大幅な調整が始まった傍、ハッシュレートの上昇は止まらず需給が悪化し相場の重石になりました。9月には市場が待ちに待ったBakktの現物引き渡しBTC先物が取引開始されるも、出来高の低さが悲観視され相場は100万円を割り込みました。その後も、米フェイスブックのLibra発表に起因するステーブルコイン規制の議論が、米国では「ステーブルコインを証券とみなす」法案提出にまで発展し、10月には一時80万円まで相場が下落しました。同月末には習近平国家主席の「ブロックチェーンを国のコア技術として推進する」という発言に思惑買いが入りましたが、これはオーバーシュートとなり、その後はジリジリと利食い売りに押し返され、中国国内の仮想通貨(暗号資産)取引に対する取り締まり強化の報道も相まって、相場は71万円周辺まで安値を広げました。12月には相場が下げ止まったものの、年末まで70万円から86万円のレンジ内での推移が続きました。

年間パフォーマンス比較で見るビットコインのサイクル

「統計」とタイトルにもあるのでそろそろ数字の話をします。2019年下半期からの相場低迷でビットコインに関するネガティブなヘッドラインも散見された一方、一年を通して見てみると、相場は91.65%の上昇と高いパフォーマンスを記録したことは既知の事実かと存じます。bitbank.ccで遡れる限りの年次データから見ても、2012年からの8年間で、2019年は5番目に高いパフォーマンスで、通年で値上がりした年の中では下から2番目だったことがわかります(第1図内緑線)。

第1図:BTC対円月次推移指数化チャート 前年終値を1として指数化(12月の数値が100%を上回ると(下回ると)年間で値上がり(値下がり)したことになります) 出所:bitbank.ccより作成

一方、年間で相場上昇した年にしては、2019年は値下がりした月が合計で6ヶ月と強気相場の年にしては多い結果になりました(第1表)。年間の上昇率が一番小さい2015年でも、値下がりした月数は合計で4ヶ月のみで、2019年の相場上昇局面は短くも上昇率が大きかったことがうかがえます。特に、相場が上がりやすいとされるアノマリーがある第2四半期に関しては、2019年は3ヶ月連続で25%以上の記録的上昇率を収めており、これは2017年の第4四半期以来となります。

第1表:BTC対円月次&年次(最右カラム)騰落率テーブル 出所:bitbank.ccより作成

全体を俯瞰して見ると、半減期があった年(2012年と2016年)から強い上昇相場となり、翌年にパラボリックな上昇を記録し、その翌年に大きく下落(or 調整)して復調に戻すと言うサイクルがうかがえます。ビットコインに限らず仮想通貨はまだまだ歴史の浅いアセットなため断言はできませんが、振り返ってみれば、2019年は最後の「復調」フェーズだったと言えるかもしれません。

ボラティリティーにもサイクルがあるか?

「ハイリスクハイリターン」と呼ばれる所以となっているBTCのヒストリカルボラティリティー(HV)は、他のアセットと比較して、依然、非常に高い水準となっていますが、2019年はビットコインにしては比較的に落ち着いた年となりました。2012年から数えて昨年の10日物と30日物の平均HVは下から3番目の低水準、最高値ベースでは双方とも下から2番目の低水準でした(第2、3表)。こうした傾向は時間帯別の平均変動率からもうかがえ、2019年の時間帯別平均変動率も概ね低水準となりました(第2図内青線)。

2019年はデリバティブ市場の拡充やグローバルでの出来高増加による流動性の向上などが、現物相場のHV抑制に繋がったかもしれません。また、偶然かもしれませんが、相場が大きく下落した翌年に当たる2015年と2019年の10日HVと30日HVの平均値と時間帯別平均変動率の水準はかなり近かったこともわかり、数字だけを見ると上述のような市場サイクルの存在がそれとなくうかがえます。

第2表:BTC対円10日物ヒストリカルボラティリティー最高値(左)、最低値(中央)、平均値(右) 出所:bitbank.ccより作成

第3表:BTC対円30日物ヒストリカルボラティリティー最高値(左)、最低値(中央)、平均値(右) 出所:bitbank.ccより作成


第2図:BTC対円時間帯別平均変動率 (変動率 = 各時間帯(1時間)の(高値 - 安値)/ 始値) 出所:bitbank.ccより作成

ビットコインのハッシュレートは記録的な水準に

一昨年(2018年)に104%の上昇を記録したビットコインのハッシュレートは、2019年には76.82%上昇しました。伸び率では前年比で鈍化したものの、実数値では9月に初めて100 Ehash/sを超え、2019年は記録的な年となりました。

2018年からのハッシュレートとBTC対円相場の推移を見ると、ハッシュレートは2018年の弱気相場中も上昇し続け、9月辺りから相場が横ばいに推移すると、ほぼ同時にハッシュレートも横ばいになっていました。2019年の場合、下半期からの弱気相場が下げ止まる前にハッシュレートは頭打ちとなり、12月末までは横ばいの推移となっていました。統計的に相関性はほぼないと言えるので、(ハッシュレートの13日移動平均とBTC対円の相関係数=2018年:-0.04、2019年:0.003)ハッシュレートの推移で相場の方向感を見極めるのは難しいと言えますが、2018年も2019年もハッシュレートが横ばいで推移すると、相場に新しい流れが出るサインとなっていたことには注意したいです(2020年年明け早々に相場はレンジを上方ブレイクしました)。また、2019年も12月中旬からはハッシュレートの13日移動平均が上向きに転じていたのは、相場環境に関わらずマイナーが利益を上げられていたからだと指摘されます。

第3図:ビットコインハッシュレートとBTC対円チャート 日足 出所:blockchain.comおよびbitbank.ccより作成

ビットコインとアルトコインの比較

さて、最後は他の仮想通貨のパフォーマンスも交えて見ていきたいと思います。

まずは主要銘柄の日足一年分の相関マトリックス(対ドル)が下記の第4図になります。相関性の強弱はあり年間のパフォーマンスにはかなりばらつきがありますが、統計的には殆どの銘柄が大体同じ方向感で動いていたことが示唆されています。特に時価総額上位のBTC、ETH、XRP、BCC、LTC、EOSは、お互いと他の銘柄との相関性が強く、殆どのケースで相関係数が0.6〜0.7以上をマークしています。BTCやその他の銘柄と比較的に相関性が弱いBNB、XTZ、LINKは、PoSもしくはDPoSアルゴリズムと言う共通点がありますが、EOSやADAもステーキングコインなので、コンセンサスアルゴリズムと全体の相関性強弱は関係なさそうです。

第4図:主要仮想通貨対ドル相関マトリックス(2019年の日足) 出所:coingecko.comより作成

一つ言えるとすると、2019年の上記3銘柄は他を圧倒するパフォーマンスで相場が推移していました。下記の第5図は第3図内の銘柄の日次データを前年終値を1として指数化したチャートです。少し見にくいですが、BNB、XTZ、LINKは第1四半期から第2四半期にかけて他銘柄を遥かに凌ぐ上昇を記録しています。XTZは第3四半期に一度下落しましたが、年末にかけて再び浮上し、最終的にはBTCとBNBを凌ぐパフォーマンスになりました。

数字の話からはまたまた遠ざかってしまいますが、Binanceは2019年初よりIEO(イニシャル・エクスチェンジ・オファリング)の火付け役となり、BNBの保有をIEO参加条件としたことでBNB需要が増加するなど、取引所コインの先駆け的な地域を確立。XTZは昨年、3月にCoinbaseでの機関投資家向けステーキングサービス開始や、第4四半期には同サービスの全米とグローバル展開、さらにBinanceとKrakenで同様のサービスが開始されました。LINKの発行体であるチェーンリンクは、Google、BinanceやOracleといった著名企業とのパートナーシップ締結や、LINKのCoinbase上場などが相場の支援材料となるなど、これら3銘柄は個別材料が豊富にでたことで結果的に他を凌ぐ高パフォーマンスに繋がり、BTC等との相関性を弱めたと言えそうです。

しかし、今回比較している銘柄で2019年のBTCのパフォーマンスを超えられたのは、BNB、XTZ、LINKのみで、ほぼ半分の銘柄は100%ライン(前年終値)を割り込む結果となりました。2018年のICO(イニシャル・コイン・オファリング)ブーム以来、銘柄数は増え続ける一方で、需要は一部のコインに偏ってきていることが指摘されます。

第5図:2019年主要仮想通貨対ドル指数化チャート 日足 2018年12月31日終値を1として指数化 出所:coingecko.comより作成

ざっくりと振り返って見ましたが、相場から見てもハッシュレートから見ても、やはり「なんだかんだで2019年のビットコインは強かった」という印象を受けます。上述の「ビットコインの市場サイクル」が正しいとすると、2020年はHVの更なる低下や相場の堅調な推移が期待されますが、今年は仮想通貨がメインストリームに台頭し、機関投資の参戦が増えてから初めてビットコインが半減期を迎えるため、予想外なシナリオにも注意が必要でしょう。

また、2020年は米中貿易合意第1弾以降の米中関係行方に米大統領選や、足元の中東情勢の行く末など、米国発で金融マーケット全体を揺がしかねない材料が盛りだくさんとなっており、ビットコインは有事の際の逃避先として活躍できるかにも注目です。

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